ウルトラファインバブルの農業利用とは?効果・実証事例・装置の選び方を解説

ウルトラファインバブル(UFB)は、目に見えないほど小さな気泡を含ませた水を灌水や養液に使う技術で、農業分野でも導入が広がっています。本記事では、UFBの定義と仕組み、期待される効果、作物別の事例と実証データ、主な装置とメーカー、導入ステップまでを、根拠の確かさを区別しながら整理して解説します。

目次

ウルトラファインバブル(ナノバブル)とは?農業における基本的な仕組みと特徴

UFBは農業用水の改質技術のなかでも、気泡の大きさや数を測定して性能を示せる点が特徴です。まずは定義と気泡サイズの違い、作物が育つとされる仕組み、土壌環境への影響を順に確認しましょう。

ウルトラファインバブル(UFB/ナノバブル)の定義と気泡サイズの違い(マイクロバブルとの比較)

ファインバブルは、国際規格ISO 20480-1(日本ではJIS B 8741-1)で、直径100マイクロメートル未満の気泡の総称と定められています。そのうち直径1マイクロメートル以上のものがマイクロバブル、1マイクロメートル未満のものがウルトラファインバブルです。マイクロバブルは水中をゆっくり上昇しながら縮んで消えていくのに対し、UFBは水中に長くとどまる性質があり、目には見えず水が透明なまま保たれます。なお、ナノバブルという呼び名は事業者によって使い方が異なり、直径100ナノメートル以下の気泡をナノバブルまたはUFBと呼ぶ資料もあります。製品を比較する際は、名称よりも、気泡の大きさと個数が測定値として示されているかを確認することが大切です。

なぜ水で農作物が育つのか:高い浸透性・保水性とイオン集積効果のメカニズム

UFBによる生育促進の仕組みとして、事業者はいくつかの説明を示しています。丸山製作所は、生育適温では水中の溶存酸素が不足しやすく、根が酸欠になると成長ホルモンの合成や窒素の吸収が低下するため、UFB水の灌水で根に酸素が行き渡り、これらが改善されると説明しています。ヤザワ環境エンジニアリングは、マイナスの電荷を帯びた気泡が、土壌中のプラスの電荷を帯びた栄養素(カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄など)を引き寄せ、効率的な供給につながると考えられているとしています。さらに、気泡が持つ微細化する力と運ぶ力が肥料の浸透性を高めるという説明や、水の保持力が高まるという説明もあります。ただし、これらは仮説の段階です。京都大学の研究プロジェクトの説明では、UFBによる生育促進の報告は多いものの、植物の根からどの程度吸収され、体内のどこまで運ばれ、どのように生育を促すのかは解明されていないとされています。

土壌環境への影響:土壌菌・微生物の活性化と根域(根活)の環境改善

土壌環境への影響については、丸山製作所が、土中の好気性菌が活性化して窒素が長く保たれると説明しています。カクイチの資料では、東京農業大学との実験でUFB区のイチゴの光合成や蒸散が促進されたとされ、好気性細菌が酸素UFBによって活性化し、硝酸態窒素の吸収が進むと葉の成長が促されるという仕組みが示されています。根域の酸素環境が改善されれば、根の活力が上がるという考え方で、ヤザワ環境エンジニアリングの製品名が「根活」とされているのも、この発想によるものです。一方で、微生物の種類や量がどう変化するのかを、第三者が継続的に測定した公開データは限られています。土壌診断で、pHや電気伝導度、養分の状態を前後で記録しておくと、自分の圃場での変化を確認しやすくなります。

農業でウルトラファインバブルを導入する5つの劇的な効果・メリット

UFBの導入メリットとしては、発根の促進、減肥、水やりの省力化、収量や品質の向上がよく挙げられます。ここでは五つの観点から、確認できた報告の範囲で整理し、導入コストや維持管理といった注意点も取り上げます。

① 発芽率の向上・強固な発根促進(根張り強化)と成育スピードの短縮

発根の促進は、UFBで最も多く報告されている効果です。丸山製作所の導入事例には、水稲の育苗で根張りが良くなった、欠株がなくなったという報告が並びます。三重県の小松菜の水耕栽培では、UFBの導入で根の長さが通常の倍以上に伸びた一方、収量は例年どおりだったという事業者の事例もあり、根が伸びても収量には直結しない場合があることを示しています。学術誌には、酸素UFB水を用いたスギの発芽と生育の比較試験があり、水道水区よりも苗の高さが約1センチメートル大きく、乾燥重量も重かったと報告されています。ただし、これは樹木の例で、野菜にそのまま当てはまるとは限りません。生育スピードの短縮についても、作物や環境による差が大きいと考えるのが妥当です。

② 減肥効果:肥料の吸収効率を高め、少ない肥料でも大きく高品質に育てる

減肥効果については、丸山製作所と高知工業高等専門学校の共同研究が参考になります。2023年10月に現地報告会で公表された実験では、小松菜を水耕栽培し、通常の液肥100パーセントと水の区、液肥80パーセントにUFB水を使う区を2週間比較しました。その結果、UFB水の区で葉の部分が大きく育ち、成長に関わる植物ホルモンの量も多い傾向が見られ、肥料を20パーセント削減しても成長が促進されることが確認されたとしています。ただし、これは水耕栽培の小松菜という限られた条件の結果で、土耕や他の作物では別途確認が必要です。同社自身も、現場では大きな促進効果が出る場合がある一方、効果があまり見られない事例も存在していたと述べています。減肥は、ECやpHを測定しながら段階的に進めるのが安全です。

③ 散水・水やり回数の削減:高い保水性による夏場の育苗・乾燥対策と作業効率化

水やりの省力化は、導入事例が具体的に報告されている分野です。茨城県土浦市で水耕栽培のみつばを育てる株式会社みずはでは、ホース取付型のUFB発生ノズル「テックシャワー」を導入したところ、育苗用のウレタンが夏でも乾きにくくなり、朝昼晩の2回から3回だった水やりが朝1回で済むようになったと、丸山製作所の取材記事で紹介されています。夏の乾燥による未発芽の課題に対処でき、作業者の身体的な負担も減ったとのことです。これは事業者による取材記事で、保水性が向上する仕組みを測定した結果ではありませんが、現場の作業時間に直結する効果として注目できます。

④ 収量増加・品質向上:大粒化・糖度アップ・食感や葉の成長促進

収量や品質に関する報告も複数あります。丸山製作所は、土耕ハウスのミニトマトで収穫量が例年の110パーセントになった事例や、水耕ほうれん草で200グラムあたりの単価が70円から120円に上がった事例を掲載しています。OKエンジニアリングは、熊本県のミニトマトの灌水栽培で品種により5パーセントから35パーセントの収穫増が得られたと紹介しています。ファインバブル情報サイトには、養液土耕のイチゴ高設栽培で酸素UFB水を供給し、総収穫量が24パーセント、糖度が0.9度増えたという報告もあります。いずれも事業者や関係者による報告で、対照区の設け方や反復の有無は個別に異なります。数値は条件付きの参考値として受け止めてください。

⑤ メリット・デメリットの比較:導入コストや維持管理に関する注意点

メリットは、電気と空気と水だけで運用でき、薬剤を使わない点や、発根、減肥、水やりの省力化などの報告があることです。デメリットとしては、まず初期費用と電源の確保が必要になります。ヤザワ環境エンジニアリングの製造装置は100ボルトの電源と給水栓が必要で屋内専用とされ、きれいな水を使うよう求められています。また、効果が出ない場合があること、作用機序が解明されていないこと、気泡が目に見えないため導入者自身が存在を直接確かめにくいことも注意点です。みずはの代表も、UFBは目に見えないほど微細なため、存在を直接確認するのは困難で、農家同士の情報交換を重視していると話しています。導入前に、自分の作物で小規模に試すのが現実的です。

【作物別・栽培方法別】ウルトラファインバブルの活用事例と実証実験データ

ここでは、いちご、果菜類、葉物野菜、露地栽培といった作物や栽培方法ごとに、確認できた事例と実証データを整理します。事例の多くは事業者の発信であるため、出典と試験条件をあわせて読み取ることが大切です。

いちご栽培:施設丸ごとUFB化による葉の巨大化と180g超え大粒いちごの実現

いちごでは、養液土耕の高設栽培で酸素UFB水を供給し、総収穫量が24パーセント、糖度が0.9度増加したという報告があります。カクイチの資料では、東京農業大学との実験でUFB区のイチゴの光合成と蒸散が促進されたとされています。OKエンジニアリングは、香川県の讃岐姫などで粒が大きくなった事例を紹介しており、神奈川県のいちご生産者から、株が元気になり花が途切れないという声がヤザワ環境エンジニアリングの資料に掲載されています。一方、施設全体をUFB水にして葉が大きくなり、1粒180グラムを超える大粒が実現したという具体的な数値の出典は、今回の調査では確認できませんでした。大粒化を検討する際は、品種や栽培条件、計測方法が明示された事例を確認してください。

トマト・ミニトマト・メロン・きゅうり:潅水・水耕栽培における成長促進と高品質化

トマト類は、導入事例が最も多い作物です。丸山製作所のミニトマトの事例では収穫量が110パーセントとされ、OKエンジニアリングは熊本県のミニトマトで品種により5パーセントから35パーセントの増収、2015年には46パーセントの収穫増を紹介しています。ただし、熊本県の事例は、井戸水を使い、灌水量が約150パーセント、肥料も増量した条件下のもので、UFBだけの効果とは言い切れません。メロンでは、通常1株4玉のところ5玉付けに挑戦し、大きな玉が多く収穫できたという事例がOKエンジニアリングのサイトに載っています。きゅうりの水耕栽培では、島根県の後継者が試験した例があります。作物ごとの結果は、肥料や灌水量などの条件をそろえた比較で判断する必要があります。

葉物野菜(レタス・ホウレンソウ・小松菜・みつば):閉鎖型水耕栽培・植物工場での発芽・生育比較

葉物野菜は、水耕栽培との相性が良く、実証も進んでいます。小松菜では、高知工業高等専門学校との共同研究で減肥20パーセントでも葉が大きく育つ傾向が示されました。ほうれん草は、丸山製作所の事例で夏場に出荷が難しかった水耕栽培が出荷可能になったと紹介され、OKエンジニアリングは硝酸イオンの低下と成長促進を報告しています。レタスでは、水耕栽培用に500リットル毎分のノズルを導入した例があり、ヤザワ環境エンジニアリングの資料はチップバーンの減少を示しています。みつばは、水やりの省力化の事例があります。閉鎖型の植物工場で、大学と共同で発芽を比較した公開データは、今回の調査では確認できませんでした。

露地栽培から施設園芸・アクアポニックスまで:幅広い栽培体系への適応

露地栽培でも事例があります。丸山製作所の導入事例には、ズッキーニ、トマト、にんにく、玉ねぎ、白菜で1.3倍の大きさになった例、霜の影響を受けたレタスが回復した例、大根や人参で病気の発生が軽減した例、大豆で成長が促進された例が並びます。OKエンジニアリングも、静岡県の茶畑で若葉の成長が促進された例や、トマト苗が霜や低温の被害を受けなかった例を紹介しています。露地は気象の影響が大きく、比較区の設定が難しいため、事例は参考にとどめ、自分の圃場で隣接区を設けた比較をお勧めします。アクアポニックスについては、今回の調査では農業用の公的な実証データを確認できなかったため、導入を検討する場合はメーカーに個別に確認してください。

農業用ウルトラファインバブル発生装置・製品タイプと主要メーカーラインナップ

UFB発生装置には、ポンプ型、タンク循環型、ノズル型などがあり、動力や規模も多様です。ここでは公式情報で確認できた主要メーカーの製品の特徴と、小規模な園芸から大規模農地までの選び分けの考え方を紹介します。

丸山製作所(MUFBウルトラポンプ):単体・モータ式・エンジン式・バッテリ式製品

丸山製作所のMUFBウルトラポンプは、用途や目的に応じて選べる4タイプが農業向けに用意されています。ポンプ単体のタイプ、持ち運びに便利で小回りが利くバッテリ式、電源が確保できる場所で使う設置型のモータ式、電源の確保が難しく大規模な場所に適したエンジン式です。導入事例には、既存の配管に接続して使うUFB320EW、タンクに貯水して使うUFB202M-Sやエンジン式のUFB320EAなどの型式が記されています。水稲の育苗から水耕栽培、露地の灌水や液肥、殺菌剤の散布まで用途が広いのが特徴です。価格は公式サイトに掲載されておらず、問い合わせによる見積もりとなります。

ヤザワ環境エンジニアリング:ナノバブル水製造装置(NEGSシリーズ)と植物活性水(K-20L)

ヤザワ環境エンジニアリングは、産業技術総合研究所と共同開発した技術を使うとして、ナノバブル水の製造装置と、ナノバブル植物活性水「根活」を扱っています。製造装置NEGSは全自動で凍結防止ヒーター付きとされ、気液二相流旋回方式で12時間以上連続して循環させ、高濃度のナノバブルを作るという説明です。容量は50リットルから300リットルまでのA50-SHからA300-SHがあり、販売希望価格は税別で75万円から170万円とカタログに記載されています。100ボルトの電源と給水栓が必要で、屋内専用です。植物活性水K-20Lは容量20リットルで、販売希望価格は3,500円(税別)、冷暗所で1年間保存でき、灌水タンクや養液タンクに希釈して使います。装置を導入する前に、まず活性水で試せる点は検討しやすい特徴です。

散水ノズル・発生ノズルタイプ(スカッシュ・テックシャワー・OKノズル等)

ノズルタイプは、ポンプやタンクを新設せずに導入しやすい点が特徴です。丸山製作所のテックシャワー(UWN-140)は、ホースに取り付けて水を流すだけでUFB水を作れるタイプで、2024年5月に発売され、付属のホースバンドで装着でき、動力噴霧機にも接続できるとされています。OKエンジニアリングのOKノズルは、既設の配管に組み込むだけで導入できるマイクロバブルとUFBの発生ノズルで、流量に応じて7リットル毎分から500リットル毎分までの型が事例に登場します。スカッシュについては、今回の調査で製品の仕様を確認できなかったため、詳細は各社の公式資料でご確認ください。水圧や流量の条件が性能に影響するため、仕様書で適合を確認する必要があります。

家庭菜園・園芸用から大規模農地・施設園芸向けシステムまで

家庭菜園や園芸では、ホースに取り付けるシャワーノズルのような小型で手軽な製品が向いています。丸山製作所は、プロ仕様のUFBをガーデニングでも使えるようにしたとしてテックシャワーを紹介しています。施設園芸では、液肥タンクや養液タンクの循環ラインに組み込む方式が多く、OKノズルの例では1トンのタンクで液肥を循環させ、水圧は0.08メガパスカル前後とされています。大規模農地では、エンジン式のポンプで畦畔散布を行う例もあります。規模が大きくなるほど処理水量とコストが増えるため、段階的に導入範囲を広げる方法が現実的です。

失敗しない農業用ウルトラファインバブル(UFB)装置の選び方・導入ステップ

UFB装置は、栽培体系や水量、電源の有無によって適した型式が大きく変わります。装置選びで後悔しないために、栽培条件の整理から費用の比較まで、四つのステップで確認すべき点を具体的に整理します。

STEP 1:栽培体系(施設・水耕・露地)および必要水量・散水方式の確認

最初に、栽培体系が施設、水耕、露地のどれか、1日にどれだけの水を使うか、灌水が点滴か散水か、タンクを使うかを整理します。丸山製作所の事例を見ても、既存の配管に接続する、タンクに貯水する、ラジコン式の動力噴霧機で畦畔に散布するなど、使い方は多様です。必要な処理水量に合わない小型の装置を選ぶと、十分なUFB濃度が得られない可能性があります。ピーク時の使用水量と、水を使う時間帯もあわせて確認しておいてください。

STEP 2:動力タイプ(電動・エンジン・バッテリー・ノズル装着型)の選定

動力は、設置場所の条件で選びます。電源が確保できる施設なら電動のモータ式、電源がない広い圃場ならエンジン式、持ち運びたい場合はバッテリ式、既存の配管や散水設備を活かしたい場合はノズル装着型が候補です。ヤザワ環境エンジニアリングの製造装置のように、100ボルトの電源と屋内の設置場所が前提の機種もあります。動力の種類によって燃料費や電気代、保守の内容も変わるため、ランニングコストと合わせて検討してください。

STEP 3:大学・地域JA部会との共同研究データや実証事例の確認

効果の根拠を見極めるため、大学や公的機関との共同研究、地域のJAや部会での実証事例があるかを確認します。丸山製作所は高知工業高等専門学校と2021年から共同研究を行い、小松菜の減肥栽培の結果を公表しています。みずはの事例の取材には、JA全農いばらきが協力しています。京都大学生存圏研究所のように、作用機序の解明を進めている研究もあります。自分の作物と近い条件の事例か、対照区があるか、数値の測り方が明示されているかを見ることで、販売資料との差を見極められます。

STEP 4:初期費用(導入コスト)・ランニングコストとアフターサポートの比較

初期費用だけでなく、電気代や燃料費、消耗部品、設置工事、保守の費用を含めて比較します。たとえばヤザワ環境エンジニアリングの製造装置は、設置に関わる費用が別途見積もりで、配送費が3万円から15万円とされています。製品によっては価格が公開されていないため、見積もりを取り、保証期間や故障時の対応、試験導入の可否を確認してください。小規模な試験導入で効果を確かめてから、本格導入に進むと、投資の失敗を避けられます。

まとめ

ウルトラファインバブルは、ISO 20480-1で直径1マイクロメートル未満の気泡と定義され、発根の促進、減肥、水やりの省力化、収量や品質の向上などが報告されています。高知工業高等専門学校との共同研究で、水耕の小松菜が減肥20パーセントでも成長促進の傾向を示した例もある一方、効果が出ない事例も存在し、作用機序は研究途上です。導入にあたっては、栽培体系と必要水量に合う装置と動力を選び、共同研究や実証事例の条件を確認し、費用とサポートを比較したうえで、小規模な比較試験から始めることをお勧めします。

参考文献

この記事を書いた人:

精密農業編集部

運営:
株式会社ARIJICS(監修:有路友一) 
https://arijics.com/company/founder/

精密農業編集部は、農業の現場で起きる「うまくいかない」「判断に迷う」といった状況に対して、原因や条件を整理し、考え直すための材料をまとめています。

農家の方が自分の圃場や条件に照らして判断できるよう、事実・前提条件・注意点を中心に情報を構成しています。

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