令和7年(2025年)4月から、農地の利用に関するルールが大きく変わりました。 地域の将来像を描く「地域計画」が法定化され、農地転用を行う際にもこの計画との整合性がこれまで以上に重視されるようになっています。 本記事では、地域計画内の農地を転用するために必要な新手順や、計画からの「除外」手続き、注意すべきポイントを詳しく解説します。
2025年4月から農地転用の手続きが変わった
2025年4月から、地域計画の策定・公告に伴い、農地転用の手続きは地域のマスタープランである「地域計画」との調整が前提となりました。 今後は、農地を農業目的以外で利用しようとする場合、まず地域計画の区域から当該農地を「除外」する、あるいは計画の内容を変更する手続きが必要になります。 これにより、場当たり的な転用を抑制し、地域全体でまとまった農地を次世代へ引き継ぐ仕組みが強化されています。
何が変わったのか|地域計画からの除外が転用申請の前提に
農地を農業目的外での利用に供する場合には、原則として地域計画からの除外(計画の変更)が必要となります。 令和7年3月末までに各市町村で策定された地域計画は、10年後の農地利用の姿を「目標地図」として定めており、この地図の書き換えが転用許可の重要な判断材料となります。
なぜこのルールが設けられたのか
背景には、農業者の減少や耕作放棄地の拡大により、地域の農地が適切に利用されなくなる懸念があります。 地域計画を法定化し、将来の農地利用を明確にすることで、農地の集約化を加速させ、生産性を向上させることが喫緊の課題となっているためです。
地域計画と農振除外・農地転用の関係を整理する
地域計画は、農地を将来にわたって適正に利用し、集約化を進めるための設計図です。 転用を検討する際は、都道府県が指定する「農業振興地域」や市町村が設定する「農用地区域(青地)」といった従来の区分に加え、この「地域計画」における位置付けを正しく理解する必要があります。 自分の農地が「守るべき農地」として地域計画に載っている場合、転用のハードルは以前よりも高くなる可能性があります。
地域計画とは何か(目標地図との関係)
地域計画は、地域の話し合いに基づき策定される「地域農業の将来ビジョン」と、一筆ごとに将来の耕作者を示した「目標地図」で構成されます。 目標地図は、おおむね10年後を見通して作成される地域農業のマスタープランです。
農業振興地域・農用地区域・農地転用の3つの違い
- 農業振興地域: 都道府県が農業振興を図るべきとして指定した地域です。
- 農用地区域: 市町村がおおむね10年を見通し、農用地として利用すべき土地として設定した区域(いわゆる青地)です。
- 農地転用: 農地を宅地や施設など、農業以外の目的に変えることを指します。
自分の農地が地域計画の区域内かどうか確認する方法
各市町村が公告している地域計画や、インターネット上の「eMAFF農地ナビ」で確認することが可能です。 意向調査に基づき、自分の農地が将来の受け手が決まっている区域か、あるいは「今後検討」となっているかなどを把握できます。
地域計画内の農地を転用する際の2つのパターン
農地を転用する際の手続きは、その利用目的が「農業以外の目的」か「農業上の施設」かによって大きく2つのパターンに分かれます。 住宅や資材置場などの完全な農業外利用の場合は、事前に地域計画そのものを変更し、区域から除外する必要があります。 一方で、集出荷施設や畜舎などの農業用施設を建てる場合は、農業上の利用の一環として扱われるため、手続きの性質が異なります。
①農業外の利用(宅地・資材置場など)→事前の地域計画変更が必要
農地を農業目的以外(宅地、駐車場、資材置場等)で利用する場合には、あらかじめ地域計画から除外する変更手続きを行わなければなりません。 この変更には、市町村による案の作成や、農業委員会・農地バンク等関係者の意見聴取、2週間の公告・縦覧といった法的なプロセスが必要となります。
②農業上の利用(農業用施設など)→事後の変更で可能なケースも
農業用施設(温室、畜舎、集出荷施設等)を設置する範囲については、地域計画の任意記載事項として協議の場で話し合われます。 農用地区域内であっても、農業用施設用地として利用する場合は、開発事業計画の提出などを経て、促進計画等に位置付けることが検討されます。
地域計画の変更申出の手続き(Step別)
地域計画の変更は、市町村が主体となって行いますが、農家個人の転用希望に伴う場合は、窓口への「変更申出」からスタートします。 この手続きは、単なる事務作業ではなく、地域の話し合いの内容(地域計画)を書き換えるプロセスであるため、一定の期間を要します。 2週間の縦覧期間中に利害関係人から意見書が出されることもあるため、計画的な準備が必要です。
- Step1:転用希望農地が地域計画区域内かを窓口で確認
まずは市町村の農政課や農業委員会で、地域計画および目標地図での位置付けを確認します。 - Step2:地域計画変更申出書の作成と必要書類の準備
転用後の用途が地域計画の目的(農地の集約化や効率的利用)を著しく阻害しないか検討し、書類を整えます。 - Step3:市町村への申出と関係者への意見聴取
市町村は変更案を作成し、農業委員会、農地バンク、JA、土地改良区などの意見を聴取します。 - Step4:地域計画変更案の公告・縦覧(2週間)
計画の案が公告され、2週間の縦覧期間中に誰でも意見書を提出できる状態に置かれます。 - Step5:変更完了後に農地転用許可申請へ進む
意見等への対応を経て計画が正式に変更・公告された後、農地法に基づく転用許可申請等の本手続きが可能になります。
地域計画変更申出に必要な書類一覧
変更申出にあたっては、転用によって地域の農地集約化にどのような影響が出るかを説明するための書類が求められます。 特に、目標地図で特定の担い手に割り当てられている農地を転用しようとする場合、その代替案や妥当性を示す資料が重要になります。 また、農業用施設を設置する場合は、施設の面積や位置を示す具体的な図面の提出も必要です。
- 変更申出書: 所在地番、面積、現在の位置付け、変更後の内容を記載したもの。
- 利用計画・開発事業計画: 転用後の用途、施設の面積、位置、施設物間の距離を表示する図面など。
- 農地の位置図・公図: 周辺農地との位置関係や集約化への影響を確認するための地図類。
農振除外と農地転用許可申請の流れ
地域計画の変更(除外)が認められた後は、従来の「農振除外」および「農地転用許可」の手続きへと移ります。 ただし、農地バンクが作成する「促進計画」を活用して転用を伴う権利設定を行う場合は、別途の農地法5条許可や農振法15条の2の許可を要しない特例が適用されるケースもあります。 いずれにせよ、地域計画との調和が保たれていることが許可の絶対条件となります。
地域計画の変更が認められないケースと注意点
地域計画の変更は、地域の「将来の在り方」に合致しない場合、認められないことがあります。 特に目標地図において、地域の重要な担い手の耕作地として位置付けられている農地や、多額の公費を投じて基盤整備が行われた農地は、転用が厳しく制限されます。 転用を強行しようとすると、地域全体の集約化計画が崩れる恐れがあるため、事前の丁寧な合意形成が欠かせません。
目標地図に担い手として記載されている農地は転用しにくい
目標地図は、地域が「10年後も農地として維持する」と決めたエリアを示しています。 ここに特定の担い手が位置付けられている場合、その農地は集約化の重要拠点とみなされるため、安易な除外は困難です。
転用申請前に地域計画変更を怠った場合のリスク
地域計画との整合性が確認できない場合、農地法に基づく転用許可そのものが下りないリスクがあります。 また、都市近郊など転用期待が大きい地域では、事前に丁寧な説明を行わなければ、計画策定そのものに支障をきたすことも懸念されています。
農地転用を検討する前に知っておくべきこと
地域計画の本来の目的は、農地の転用ではなく「農業上の利用の確保」と「集約化」です。 そのため、個人の都合による細切れの転用は、地域全体の生産コスト低減や効率化を妨げる行為とみなされる場合があります。 転用を考える前に、まずは農地バンクを活用した貸し付けや売却によって、地域の担い手に農地をつなぐ選択肢を検討することが、制度の趣旨に沿った対応となります。
よくある質問(FAQ)
- 地域計画区域外の農地は従来どおり転用できるか?
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基本的には従来の農地法の手続きによりますが、基本構想を策定している市町村では、原則として市街化区域を除いたほぼ全域を地域計画の対象とすることが基本です。
- 地域計画変更の申出から転用許可まで何ヶ月かかるか?
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2週間の公告・縦覧期間や関係者への意見聴取が必要なため、数ヶ月単位の期間を見込む必要があります。
- 相談窓口はどこか・費用はかかるか?
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お住まいの市町村の農政担当課、農業委員会が主な窓口です。 相談や地域計画の閲覧自体に費用はかかりません。
まとめ
2025年4月からの新ルールにより、農地転用は「地域計画という将来の設計図」を書き換える重い手続きとなりました。 転用を検討される際は、まずはご自身の農地が「目標地図」でどのように位置付けられているかを確認し、早めに市町村や農業委員会の窓口へ相談してください。 地域の将来像を尊重しつつ、適切な手続きを進めることが大切です。
参考文献一覧
- eMAFF農地ナビ 公示情報
- eMAFF農地ナビ 用語解説・農振法区分
- 地域計画の策定状況(令和7年4月末時点)
- 地域計画策定マニュアル(趣旨・背景)
- 地域計画策定のフローと区域設定
- 協議事項(将来の在り方・保全エリア)
- 協議結果の取りまとめ手順
- 目標地図の役割・作成手順
- 地域計画の要件と整合性
- 地域計画の公告・縦覧・意見書
- 地域計画記載例(農用地利用方針)
- 地域計画の変更(除外・軽微な変更)
- 都市的地域における転用期待と課題
- 農地中間管理事業の基本要綱(促進計画と転用許可)
- 農業用施設用地の特例
- 開発事業計画の提出
- 機構関連事業実施地の転用制限
- よくあるご質問(地域計画と転用)
- 農地政策課お問い合わせ先
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